11.微生物検査とHACCP

ここではHACCPにおける微生物検査についてご紹介したいと思います。

【微生物検査は何のため?】
時々、小規模な製造業をされている方から、製品(完成品)の微生物検査の実施頻度に
ついてお問い合わせがあります。
例えば、「抜き取った製品の微生物検査を月1回実施しているが少ないでしょうか」
その時にお聞きするのが、「何を目的として微生物検査を行われているのですか?」
その答えとして、「製品の安全性を確認するためです」。

ここでみなさん、HACCPという衛生管理の手法がなぜ開発されたのか思い返してみてください。HACCPは、『従来の抜き取り検査ですべての製品の安全性を確認(担保)できるの?』という疑問からスタートしたものです。

言い換えれば、抜き取り検査で、安全でない製品の出荷をストップできるの?ということです。一部の抜き取った製品で微生物検査を行って安全性を確認できたとしても、その他の大半の製品は未検査で、厳密には安全性が確認できていないものです。もちろん、全数検査などということは、食品の場合売るものがなくなってしまうので全く非現実的です。

そのために考え出されたのが、工程中の管理点を連続管理することですべての製品を監視するHACCPという衛生管理なのです。

最初のご質問に戻りますと、月1回の検査を2回、3回にしても所詮抜取り検査であり、すべての製品の安全性を確認しているわけではありません。
そこでHACCPの出番!ということになります。
HACCPを正しく実施すれば製品の抜き取りによる微生物検査は不要と言い切る専門機関もあります。

【HACCPでは微生物検査はいらないの?】
では、HACCPにおいて微生物検査は全く不要なのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。

例えば、加熱条件を決めるとき、対象の微生物が本当に殺菌されるかどうかを確認したり、手洗いや機械器具の洗浄殺菌の有効性を確認する際に、微生物検査を実施する場合があります。(【9】「妥当性確認」をご参照ください)

また、製品(完成品)の抜き取り検査は「全製品の安全性を確認すること」を目的にすると適切ではありませんが、『HACCPが正しく機能しているか』を確認することを目的にすると大切な確認手段のひとつとなります。

すなわち製品の検査結果に異常が認められた場合は、危害要因の見つけ方や重要管理点の設定方法、管理基準やモニタリング方法、是正措置等の決め方に何らかの不備がある可能性があるということになります。
(単純に、決められたルールを守っていないことが原因である場合もあります。【9】「検証」をご参照ください。

なお、統計的手法に基づき、ロット毎にいくつかの製品の抜き取り検査を行い、その結果をもって出荷判断(判定)を行うことは普通に行われています。
この場合も製品の安全性確認というよりも、「出荷するためのルール」としての検査であると捉え、あくまでもHACCPとの併用で運用することが大切です。

また例えば、衛生管理向上の指標とすることを目的として、微生物検査を実施している食品企業もあります。
いずれにしても目的を明確にして微生物検査を行うことが大切ということですね。