6.HACCP導入具体例②~パン類製造業

今回は、パン類製造のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理についてご説明
していきますが、その前に一言。

HACCPはこれぞ正解!というものはなく、「100の事業所があれば100の
HACCPがある」という言い方をされる方もいらっしゃるくらい多様なものです。

すなわち、衛生管理計画の作成を含むHACCPは既製品ではなく、あくまでも
その事業所ごとに異なる原材料や製造方法、製造環境、食品取扱者など、
さまざまな要素を考慮に入れて構築するオーダーメードということになります。

ですから、講習会や書籍、またはこの「HACCPをはじめましょう!!!」シリーズ等で、HACCPの仕組みや一例はご説明できても、実際に構築できるのは、お店や工場のことを一番把握されている皆さま自身であることをご理解いただきたいと思います。

では、いつもの通り該当する手引書をご用意ください。
HACCPの考え方を取り入れたパン類の製造における食品衛生管理の手引書(PDF)
パン粉のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(PDF)

Step1 衛生管理計画の作成
「一般的衛生管理」
「原材料の受入」、「手洗い」、「従業員の健康管理」、「器具等の洗浄・殺菌」、「トイレの洗浄・消毒」等々について、
【いつ・どのように・問題があったとき】の視点であなたの事業所における計画を作成します。

「重点衛生管理」(当手引書における表現)
パン類製造の手引書では、代表的な製品を下記の通りに分類しています。
※重点衛生管理はあくまでも一例です。

※ 金属探知機を使用する場合は、金属探知機が重点衛生管理になることもあります。

1)製造・加工・調理時の加熱温度・時間は、一般的に重点衛生管理(重要管理点)になりますが、手引書では、パン自体の焼成工程は、重点衛生管理になっていません。
これは、「有害微生物はパンの焼成工程中に十分な中心温度と時間によって死滅するため、重要な危害要因にはならない。 万が一焼成が不十分であれば製品にならないので、容易に目視判断できる。」、すなわち加熱温度が低かったり、加熱時間が短かった場合、衛生管理以前に製品として成立しないからということになります。
同じく高温で焼成する菓子類(無加熱・低加熱の菓子は除く)でも、適正な製品として製造されたということが加熱殺菌のモニタリングの役割を果たしているということから一般的に重要管理として設定しないようです。

2)高温で焼成したパンや菓子であってもその後手作業の工程があるものは、細菌汚染のリスクが非常に高まります。菓子類の食中毒発生状況(2000年~2017年:厚生労働省統計)では、全体の件数の85%が、加熱後手作業が入っているもので、原因菌もノロウイルス、サルモネラ属菌、ブドウ球菌、セレウス菌、腸管出血性大腸菌などさまざまです。プラスティック製手袋の着用はもちろんのこと、手袋自体の衛生管理にも注意を払う必要があります。

では、「パン焼成後の加工時(調理パン)」における衛生管理計画(重要管理)を作成してみましょう。
(どの工程を重要管理に決定するかは、事業者の判断になりますので、あくまでも一例です。)

※ Step2~Step4やその他の注意点については、前回の飲食店をご参照ください。
次回は、具体的な導入方法はお休みして、「代理特性と妥当性確認について」、「検証と妥当性確認の違い」などについてご説明したいと思います。